事業承継は日本全体の課題

事業承継は日本全体の課題

  進む経営者の高齢化

日本の高齢化の潮流は、中小企業の経営現場においても例外ではありません。下のグラフは、2007年から17年までの経営者(自営業者を含む全産業が対象)の年齢推移をまとめたものです。07年までは59歳以下の経営者が56.6%と過半を占めていましたが、17年には逆転、60歳以上の経営者が半数以上を占めるようになりました。さらに中小企業庁によると、25年までに中小企業の経営者のうち245万人が70歳に達し、そのうち127万社では後継者が定まっていないのが現状です。

こうした経営者の高齢化と後継者不在の問題は、一企業だけの問題にとどまりません。後継者不在という127万社の企業をそのまま放置すれば、将来の廃業予備軍となります。中小企業庁は、万が一こうした企業が廃業してしまえば、25年までに650万人の雇用と22兆円のGDP(国内総生産)が失われると警鐘を鳴らしています。


事業承継が進まない理由

中小企業経営者の相談にあずかっていて思うのは、事業承継の問題が可視化しにくいということです。経営者にとって「最後にして最大の仕事」である事業承継を、いつかは行わなければならないことはわかっていても、すぐにというような切迫感は希薄です。

目の前には、経営課題が山積みです。昨今の人手不足などもあり、従業員やパートの確保は待ったなしの状態です。人手不足を補うために業務のIT化や生産性の向上への施策も求められています。そうした状況下では、事業承継に向けた準備が後回しにされがちなのです。

しかし、経営者の高齢化が進む中、急病や認知症など健康面の不安も看過することはできません。突然、社長が経営に関われなくなれば、先述の通り清算や廃業を余儀なくされることもあるでしょう。結果として従業員は雇用を、顧客や地域は馴染んだ商品やサービスを失うことになります。

また、よく言われるように中小企業経営者は孤独でもあります。後継者候補を誰にして、引き継ぎをいつにするかといったナーバスな問題は、取引先や顧問の税理士、従業員等には相談しづらいものです。結果的に社長交代が遅れる理由となっているのです。

思い切った世代交代が企業の成長につながる

 

 

いっぽうで、こんなデータもあります。上のグラフは、事業承継後の後継者の年代別に売り上げの推移をまとめたものですが、新社長が30代以下の場合、伸びが顕著です。

逆に、50代の新社長では4年目以降は売上高がマイナスに転じていることも見て取れます。理由はさまざま考えられますが、現在の30代は、学生時代からパソコンやインターネットがある生活環境の中で育ってきた「デジタルネイティブ世代」と呼ばれ、ITやAIなどに対する投資も積極的な点が挙げられるでしょう。

親族や社内の人材、あるいは外部の第三者など、誰にバトンを託すにしても、思い切った若返りを図ってみるのは一つの選択肢といえるでしょう。

 

しんきん経営情報 2019/12-2020/1月号 別冊「事業承継・資産承継」 転載

著書 石川 和司

発行所/株式会社ダイヤモンド社